絵に生きることを決意した高校時代、海外での生活が人生を変えた。

絵に生きることを決意した高校時代、海外での生活が人生を変えた。

column 18

ミヤザキ ケンスケ

January 06, 2017

「友人とケンカしてしまったんです」

 

高校に入学後、美術コースに進学したものの、絵にのめり込めず、クラスメートとも反りが合わないミヤザキ。スケボー、音楽、洋服に夢中になり、将来のことはできるだけ考えないようにしていた。そして時間だけは、どんどん流れた。

 

「ある時、それではダメだと思って。その時点でまともな大学に今から勉強で入るのは無理だと思ったんですが、絵なら可能性があるかもしれない。それから絵に本気になりました」

 

絵のことを本気でやろうとするほど、反比例するかのように、それまで周りにいた友人たちと過ごす時間は楽しくなくなっていく。そして、冒頭のように爆発してしまった。

 

「いつか彼らを見返したい。絶対に一流の絵描きになろうと決意しました」

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ミヤザキは、世界をどこでもアトリエにしてしまう

自分自身が動き出すと、世界は回り始めた。お年玉やお小遣いを貯め、高校2年生の頃、ベルギーへと渡る。滞在中はスケッチに没頭。目に映る全てが新鮮で、どれだけ描いても描き足りなかった。若い日本人が一人で絵を描いているという姿は現地の人々にも物珍しく映ったようで、「何を描いているんだ」というように話しかけられることもしばしばだった。

 

「もちろん言葉なんて全然通じないですが、絵があれば言葉はいらないと思えたんです。絵そのものが自分自身。絵そのものが言葉だった。絵がコミュニケーションのツールになるんだと実感できました」

 

絵は描けば描くほど、発見があるのだとミヤザキは言う。自分自身の手の使い方、物の見方、描き方のクセ……同じモチーフであっても、一つとして同じ絵にはならない。どんな人が、どのように描いても、しっかりと個性が反映されるのだとミヤザキは言葉に力を込めた。そして、「そのことが何より面白かった」と続けた。

 

「元々、デッサンが苦手だったんですよ。もう、本当にコンプレックスで。ただ、同じものを描いても必ず“ズレ”る。そのことが体で分かってくると、苦手意識も薄らいでいきました。それと同時に“コレが自分の絵だ”と言い切る強さが身に付いていきました」

 

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取材の途中で立ち寄った「佐賀県立博物館」内の「café TRES(トレス)」で食べた佐賀名物・シシリアンライス。
目の前の食べ物も、絵にすると表情がガラリと変わる

元々、ミヤザキは暗いトーンの絵を描いていたというが、ベルギーに渡ってからその作風が変わった。ベルギーの屋根はカラフルで、見たままを描こうとすると、自ずと色数が増える。そのことがミヤザキに「描くこと自体が楽しい」と思わせた。 そんな経験を経て、今のミヤザキがある。絵を描く際に気を付けていることを聞くと「基本的な自分のルールとして、色はまぜない」という答えが返ってきた。

 

「彩度が強い色が好きですね。だから原色を使うことが最も効果的だと思っています。特に好きな色ですか。そうですね、黄色かな。黄色は強い。元気が出ますね。 下地に塗ることもあります」

 

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ミヤザキが絵を描き始めると、描く姿と絵が同化していくようだ

高校を卒業後、筑波大学芸術専門学群美術専攻洋画コースへと進んだミヤザキはテレビ番組への出演を通じてニューヨーク、フィリピンで壁画を制作。そして2005年、ロンドンへと単身で渡り、本格的にアート活動を開始する。

 

「世界中の人が集まっていて、それはもう刺激的でした。この時は、必ず世界に自分の絵を認めさせよう、勝負しようと決めて訪れました」

 

ミヤザキのそんな強い決意とは裏腹に、何のツテもない日本人が思う存分に描く場所はなかった。それをきっかけにストリートアートを始めるようになる。クラブハウスを渡り歩き、自身を売り込む。そんな努力が実を結び、徐々に絵を描かせてもらうようになった。

 

「ロンドンという場所はアーティストに対して寛大でした。リスペクトもある。実力があれば行動した分だけ返ってくる。何より度胸がつきました。タフにもなりましたね。現地でも極力、日本人同士、群れないようにしていました」

 

高校時代、佐賀には二度と帰って来たくないと思っていたと教えてくれたミヤザキ。 ただ、ロンドンで暮らし、そこで流れる時間の中で自分が日本人であることを強く意識するようになったという。 ミヤザキにとって、故郷とは。

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ミヤザキが通った小学校へと向かう途中には「佐賀県立博物館」(イラスト)や「佐賀県立美術館」がある。
恵まれた日常の風景が、後のミヤザキに大きな影響を与えた

 

<続く>

 

(edit.山田祐一郎)

DATA
佐賀県立博物館
住所 佐賀県佐賀市城内1-15-23
電話 0952-24-3947
営業 9:30〜18:00
休館日 月曜日
※祝日の場合はその翌日、年末12月29日~31日
※その他臨時休館あり

http://saga-museum.jp/museum/

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