山暮らし、「幸せだなあ」の瞬間

山暮らし、「幸せだなあ」の瞬間

column 15

恵良 五月

June 22, 2017

山で暮らして、「幸せだなあ」としみじみ感じる瞬間は、たびたび訪れます。
小川がこぽこぽと流れる音を聞きながら道を歩くとき。布団を干すために屋根に上がって、緑に囲まれている自分を実感するとき。満天の星が降りてきたかと思うほど、ホタルが光っているとき。自然の小さな生き物が、近づいてきてくれたとき…。

メジロやツバメがうちへ遊びにきてくれました

移住から5年。私たち家族は、千葉のマンションに暮らしていた頃とは、まったく違う生活をしています。
専業主婦だった私の生活を激変させたのは、何といっても就農です。「農」というものが、生活の中心になりました。でも、農業のことを書き始めると、ものすごく長くなりそうなので、これから追い追い書いていくことにしますね。
農作業の手を休めて、遠くの山並みを眺めながら風に吹かれるとき、本当に「幸せだなあ」と感じます。

定植中のピーマン畑。この山並みを眺めれば疲れも吹き飛びます

移住してきて、一番に苦労したのはお風呂。マンション暮らしでは、ボタンひとつ押すだけでお風呂が沸き、温度調節も思いのままでした。それが、薪で沸かすお風呂となると、火をつけることさえうまくできないのです。

我が家の風呂がま

最初の何日かは、暗くなると心細くて、夕方4時頃から沸かし始めていました。慣れない上に寒い時期で、お風呂が沸くまでに3時間くらいかかったことも…。特に、雨が続いたあとは薪が湿っているので、うちわであおぎまくった努力もむなしく、火が小さくなって消えてしまうことがたびたびありました。そんなときは涙が出そうになります。

今では、風呂焚きのコツもつかみ、だいぶスムーズになりました。普段はダンナさんが沸かしてくれるのですが、ダンナさんが不在のときなど私が沸かすと、まだ火がつかなくて泣きそうになることもあって、「やっぱりボタンひとつが便利」と思ってしまいます。でも、薪で焚くお風呂は、ボタンひとつと違って、お湯がやわらかくなるような気がします。それに、山を荒らさないためにも、適度に木を使ってあげたほうがいいそうなんです。
離れにあるお風呂に入ろうと玄関を出たら、天の川まで見えるほど澄んだ星空だった…そんなときも、私の「幸せだなあ」の瞬間です。

 

鶏を飼うことも、マンション暮らしではできなかったこと。

鶏さんも私たちの家族

移住最初の年、知り合いのお宅に伺ったとき、ちょうど烏骨鶏のヒナがいて、娘がほしがったので、2羽いただいてきました。成長しておんどりが朝3時とか4時に「コケコッコー」と鳴くようになると、うるさくてもう寝ていられません。毎朝頭から布団をかぶって、「どうか静かにしてー!」と心で叫んでました。けれど、おとなりのおばちゃんに恐る恐る「うるさくない?」と聞いてみると「全然」という答え。都会だったら、絶対、苦情殺到です。今では私も、朝のおんどりの声に気がつかなくなってしまいました。慣れてゆくのですねえ。

その後、卵を孵してひよこたちを育て、仲間を増やしていったのですが、この5年の間に、ネコに襲われ、イタチに襲われ、カラスに襲われ、めんどりを5羽も失い、そのたびに胸をえぐられるような思いを経験しました。
ときにはそんな苦しい思いを味わうけれど、鶏たちは、私に卵だけではなく、心の安らぎを与えてくれます。私が近づいてくるのを見て彼らが一斉に走ってきてくれるときもまた、「幸せだなあ」の瞬間です。

 

私は、今でもまだ、憧れていた山暮らしを自分がしているなんて、信じられない気持ちです。もちろん、「幸せだなあ」の瞬間ばかりではありません。不安になったり苦しくなったりすることもあります。でも、不安や苦労を打ち消してしまうほど、「幸せだなあ」の瞬間が日々たくさんあるから、私はここで生きていく!と強く思えるのです。

DATA
恵良農園
住所 佐賀市富士町関屋3362

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