『巨石パーク』との出会いと、謎を探る僕(後編)

『巨石パーク』との出会いと、謎を探る僕(後編)

column 26

馬場 正尊

June 28, 2017

しばらく登っていくと、ある巨石の足元に、石と石との間に囲まれた空洞があり、そこには結界を示すしめ縄が張られていた。

しめ縄の存在が妙に神々しく感じる

近づいてみると、何か神聖な空気を感じる独特の場所だった。僕が見てもこれだけ不思議な空間、過去の人間がそこに宗教的な何かを感じても無理はないと思う。
これは下山後に地元の人に聞いたことだが、戦前はこの巨石群にお参りをする習慣があったらしい。第二次世界大戦中の混乱で、それが徐々になくなっていたのではないか、という話だ。どうやってこの巨石群を人々が発見したのかは分からないが、祈りの痕跡がここにあったことは確かなようだ。

しめ縄が張られた流線形の美しい巨石は、この山のファサードのようだ

落ち着いて見てみると、様々な形をした巨石群には何らかの機能や意味合いが込められているような気がしてきた。というか、その意味を探し始めた時点で、僕はもうやばい方向に向かっているのかもしれない。
まぁ、それは一旦置いておいて、特に気になったのがこの場所だ。

絶妙なバランスで成り立っている「天の岩門(あまのいわと)」と名の付いた巨石

石と石の隙間から遠方を眺めることができる。まるで天文学的な意味があるような造形美。これを見ながら思い出したのがストーンヘンジ。言うまでもなく世界遺産であり、世界の七不思議のひとつでもあるイギリス南部の巨石群遺跡だ。石の配列からそれはおそらく太古の天文台であっただろうと言われている。紀元前2500年から2000年にかけてつくられた旧石器時代の遺跡としてあまりにも有名だ。
そこまで話を盛り上げても仕方がないが、この展望台のような場所からは、一体何が見えるのか、どこを向いているのか。否応なく妄想せざるを得ない。

「天の岩門(あまのいわと)」から眺める景色

持っていたiPhoneのアプリを使って方角を確かめてみた。ほぼ西を向いている。サンセットの方角だ。果たして、どの季節に沈む太陽の光がここへ差し込むのだろうか?ちなみに、ストーンヘンジは夏至の日の朝日がキーストーンから昇るように設計されている。果たしてここは・・・。
この辺になると、もう僕の頭は論理的なのか、非論理的なのかが分からなくなっている。

参考)ストーンヘンジ ©ben matthews :::

1時間近くかけて山頂付近にたどり着いた。しっかりと汗をかき、散策と言うよりは、ちょっとした登山に近かった。嫁と息子はヘトヘトになっている。かなりのダイエット効果が期待できる。そして山頂で、僕が唱えていた、と言うより何とかこの風景を論理的に説明しようとしていた“落石偶然積み上がり説”が崩れ去る瞬間がやってきた。山頂にも巨大な、そして今までの中でも最もアクロバティックな組み合わせの巨石が姿を現したのだ。

登山者は必ずと言っていいほどこの巨石を撮影し、この前で休憩するようだ

レム・コールハースをも凌ぐ構造的な造形だ。巨石が斜めに、浮いたように存在している。どこかしらカエルのシルエットを思わせる。ここは山頂だ。石は上から転げ落ちてはこない。ということは、空から降ってくるか、嫁が言うように宇宙人が不思議な力で運ぶか、人間が何らかの方法を用いて積み上げるしかない。しかしここは、手ぶらの人間でもやっと登って来ることができる山の上だ。
僕の仮説が崩壊し、新たな仮説の可能性も見つからない。

 

「だから、宇宙人て言ってるじゃないの」

 

またしても勝ち誇ったように嫁と息子が繰り返す。しかし、この段階では反論の術を、もはや僕は持ち合わせていなかった。

この巨大な石がどのように接地しているのか、せめてそのメカニズムが知りたくて石の足元に潜り込んだ。それがこの写真だ。

巨石の接地部分。見れば見るほど怪しく、謎は深まる

まるで切断されたような小さな石が、隙間を埋めるように丁寧に配置されている。明らかに人為的な操作を感じるディティールだ。やはり、これは人の手によるものなのだろうか。では、10トンくらいの重量がありそうな石をどうやって積み上げたのだろうか。また振り出しに戻ってしまった。謎は深まるばかりだ。山頂の気持ちの良い風に吹かれながら、僕は、ただ呆然とそれを眺めていた。

どうすればいいだろう?
僕は嫁と息子の宇宙人説を覆さなければならない。そうしないと息子の教育にもよくない。構造力学的、自然現象的理論の力が、神秘の力にそうやすやすと負けるわけにはいかない。僕は建築の仕事で、日々重力と戦っているのだ。

とにかく色々な仮説を考えてみたが、どれもしっくりこない

こんなことを考えている時、僕はある思いに当たった。
「なぜここを、巨石パークと名付けたのだろうか?」
そのネーミングはあまりにも安過ぎる。安過ぎるだけではなく誤解すら招く。パークだと思って気楽に登り始めたら、ほぼ登山だった。テーマパークのようなネーミングなのに、あるのはでかい石だけ。そして何より、この不思議で神秘的な、もしかすると日本のストーンヘンジにすらなりうる可能性がある場所を、なぜ「巨石パーク」という力の抜き過ぎた響きにしてしまったのか。
ユネスコの世界遺産のように、例えば「背振南部山麓巨石群」みたいにすれば、なんだかありがたく感じるのに。

巨石パーク案内板

そこで、僕は皆さんに相談したい。「巨石パーク」の謎、いやこの不思議な巨石群の謎を一緒に解明してみませんか。もしかすると大きな歴史的な発見につながるかもしれない。
落ち着いて考えてみれば、この一帯、背振山地の麓の並びには吉野ヶ里遺跡も存在する。歴史的に見ても日本において最も早くから人間が住み、文化的にも技術的にも進んだエリアだったのだ。しかも、周辺の地名を見直すと、大和、吉野などが残っている。日本の歴史において特別な意味を持つエリアなのではないだろうか。
同じような地名を持つ奈良の石舞台古墳は世界遺産の一部なのに、佐賀では「巨石パーク」である。小野妹子の石舞台古墳も見てきたけど、こっちの方が圧倒的に大きいし、ダイナミックで神秘的。その扱いはあまりにも不公平だ。
Ishibutai-kofun Asuka Nara pref03n4592作者 663highland (663highland) ウィキメディア・コモンズ

奈良の石舞台古墳。日本の巨石遺跡として最も有名。

「巨石パーク」の謎を、一緒に解いてみませんか?佐賀の、いや日本の歴史の重要な発見につながるかもしれない! もう僕は、気になって気になって仕方がなくなってしまっています。

何か情報をお持ちの方、また文献等の存在をご存知の方がいらっしゃいましたら編集部までご一報(Contactまで)ください。

 

text by 馬場正尊, photographs by 堀越一孝

DATA
住所 佐賀市大和町大字梅野329-5
電話 0952-64-2818(管理棟)
営業時間 9:00~17:00
入園料 無料
店休日 年末年始を除き無休(雨天時休園)
※年末年始は12月29日から1月3日までお休みです

https://www.city.saga.lg.jp/main/845.html

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