回顧録~ちゃんぽんとの出合い

回顧録~ちゃんぽんとの出合い

column 16

岡垣 貴憲

July 06, 2017

今から約25年前。
鳥取育ちの私が18歳の時、初めて佐賀を訪れ、言葉や食べ物、気候や祭りなどについていろいろと感じた事があった。その中でも、今でも鮮明に思い出すのが「ちゃんぽんとの出合い」だ。

佐賀に来てすぐ、長崎ちゃんぽんの有名チェーン店「リンガーハット」に行くこととなった。当時の私には「ちゃんぽん」という外食の選択肢がなく、とても新鮮で喜んでついて行った。
メニューに野菜たっぷりのビジュアルが載っているとこは予想通りだったのだが、調理されたちゃんぽんが配膳され、食した時のことが忘れられない。もちもちとした食感の太麺と、ちゃんぽん特有の白いスープ。
鳥取にも「ちゃんぽん」はあったのだが、当時の鳥取のちゃんぽんはラーメン屋のメニューの一つ。しかも麺もスープもラーメン。「ちゃんぽん=野菜たっぷりラーメン」という認識だった私にとって、18年間ウソのちゃんぽんを食べていた自分に気づかされた。

さらに追い討ちをかける出来事が続く。
私が入った大学のサークルには、「一文字」という焼き鳥屋さんに各学年一人ずつアルバイトを送り込むルールがあった。先輩の命を受け、バイトに入った時のことだ。
その店の隣が「池田屋」というちゃんぽん屋で、バイト時のまかないがいつもここのちゃんぽんだった。池田屋のちゃんぽんは、深みのある和風だしのスープで、もやしベースで山盛りの具の上にいつもコショウがたっぷりかけられていた。バイトが忙しい時は、2~3時間放置されてのびきった麺をすすることもあったが、その味がクセになってしまっていた。

具の野菜や肉を強火で炒める。ポイントは和風だしを投入するタイミング。野菜のうまみがだし汁と合わさって美味しさを引き立たせる。

同店のちゃんぽんは、1925年から佐賀大学の近くで営業していた中村食堂の味を引き継いでおり、元佐大生を中心に古くからのファンも多い。現在は広くて駐車場完備の店舗に移転したが、昔と変わらない味に訪問されるお客様で賑わう。

「昔この辺りでは、うちみたいな和風だしのちゃんぽんばっかりだったとよ!」とご主人の池田信宏氏。時代の流れとともに、様々な味のちゃんぽんが佐賀に流入し、今では昔ながらの味を引き継ぐ珍しいお店になってしまったとのこと。

池田屋のご主人、池田信宏氏。調理するときの真剣なまなざしとは裏腹に、普段は気のいいおやっさん。

こんな池田屋のちゃんぽんの虜になっているのが、毎週のように来店される田中夫妻。「スープが違うんだよ。初めて食べた時びっくりした。今でも最初の一口は必ずスープから口にします」と語る。

池田屋へご来店の田中夫妻。池田屋の遊氏と一緒に。

この記事を書くにあたり、改めて池田屋のちゃんぽんを食してみた。和風だしがきいていて、キリッとした男前なスープであることを改めて感じたのと、シャキシャキのもやしとモチモチの麺との絡みが絶妙。ただ、クセでたっぷりの胡椒をかけてしまう。20年以上前に食べつけていた味の記憶が無意識にそうさせるのだが、相変わらずの美味しさにホッとする自分を感じた。

ちゃんぽん。これにたっぷりの胡椒をかけるのが私の食べ方。

中村食堂の開店から数えると今年で93年目。次男の遊(ゆう)氏が池田屋の味を受け継ぐべく、父とのマンツーマンで特訓中。さらに遊氏には今春待望の長男が誕生。この味が100年、200年と受け継がれることを期待して止まない。

遊氏の長男を囲んで店頭で3ショット。

DATA
池田屋
住所 佐賀県佐賀市赤松町241-39
TEL 0952-22-7508
営業時間
<昼の部>11:00〜15:30(15:00オーダーストップ)
<夜の部>18:00〜21:00(20:30オーダーストップ)
定休日 毎週月曜日

http://www.ikedaya-saga.com/

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