モノを作る、デザインっていいな<br>そう気付かせてくれたのは、佐賀のお店です。

モノを作る、デザインっていいな
そう気付かせてくれたのは、佐賀のお店です。

column 27

倉成 英俊

August 15, 2017

倉成英俊が生まれ故郷、佐賀で案内してくれたのは、アパレルショップ「HARVEST」。「HARVEST」という言葉を辞書で調べると、穀物や果物、野菜などの収穫、刈り入れ、採取というように、記された文字を目で追えば追うほどにアパレル、そしてファッションから遠くなっていくように感じた。だからこそ、店への興味はいっそう強くなった。

 

オーナーの西照孝さんは元々、中央大通りにあったアメカジショップ「AirWorks」でスタッフとして働いていた。そして1996年に独立し「HARVEST」を立ち上げる。「最初は佐嘉神社の近くに店を出していたんです。10年間営業して、2006年に今の場所に移転しました」と西さんは言う。

 

倉成は「大学生の頃、東京から帰省した時に気になるお店だなと思って入ったのがきっかけですね。すると、AirWorksのお兄さんがいるじゃないですか。独立してこのお店をされているんだと聞いて驚きました。最初に買ったのは、パラディウムのブーツやバーバラ・クルーガーの赤いトートバッグ。今でもはっきり覚えていますよ」と振り返り、「こうやって久しぶりに訪れてもブレていませんよね。佐賀でこんなにコンセプトを保ったまま服屋を続けているのは他にあまりないんじゃないですかね」と嬉しそうに続けた。

「HARVEST」に入るなり、陳列された商品を早速試着

独立に至ったきっかけを、西さんは「アメリカのリアルなライフスタイルを表現したくなった」と説明する。「アメカジの店に勤めるようになって、アメリカへの憧れはさらに強くなりました。買い付けで実際にアメリカに行ってみると、全然違うんですよね、感覚が。当時は『まだ誰も持っていないから』とか、『〜を持っていたらモテる』とか、そういう目線で商品を買い付けに出掛けていました。ぼく自身が感じる日本、そして地元の流行というものがあって、それに沿ったものを見つけようと現地を巡るわけですが、現地の流行が全く違って。とてもギャップがありました」。

オーナーの西照孝さん

西さんは現地で目にするファッションやカルチャーだけでなく、実際に現地の同世代の言葉からも、日本とアメリカの違いを強く感じたそうだ。例を一つ挙げると、年齢はほぼ変わらないはずなのに、彼らは自然環境について真剣に議論する。そんな場に触れるたび、西さんはカルチャーショックを受けたのだという。
「自分は何をやっているんだろうと気付かされましたよ。それからですね、考えが変わったのは。環境に良い素材を使ったウエアに注目するようになったり、環境でなくても何か社会的なメッセージが伝えられるものに目を向けたり、単純にファッションではなく、プラスαで何かを加えられればいいなと考えるようになりました。それが今に続いています」。

今でもメッセージ性のあるものが店内には所狭しと並んでいる

移転前の店で10年、現在の場所に移って約10年。その時間の中で、取り扱うブランドは、西さんならではの独自色を強めつつ、徐々に広がっていったそう。現在は「REMILLA」「KELTY」「AREth」「GOWEST / GOHEMP」「NIL」といったブランドを展開しつつ、最近では帽子やキャップ、ハット、小物、Tシャツなどオリジナル商品を西さん自ら作っている。

 

西さんは「今はもう、何でもネットで買えるわけですからね。ネットでは買えない、つまり、ここに来ないとわからない、そんなものを増やしていきたいんです。洋服屋は基本的にお客さんを待つ商売。ぼくはモノを作りながら待っている感じですかね」と笑顔を見せた。

店の隅には、西さんが手がけるオリジナル商品の制作工房がある

顧客は西さんと同世代の30〜40代が中心。ちらほらと若者も来るそうだが、けん玉、スケボー、キャンプ、例えばそういったキーワードに反応するような、西さん曰く「うちの店の何かに引っかかるような子」が訪れるのだという。

 

「HARVEST」があるのは、繁華街からちょっと離れた、東京でいうならかつての“裏原”的なイメージの場所だ。西さんは「わざわざ探して、向かってきてもらえるような、目的の場所にしたかったんですよね。ここに来るまでの途中には公園があって、美術館があって、そういう場所に寄ってくる。買い物ってストーリーだと思っているんです。今はネットもそうですが、ショッピングモールもありますよね。確かに便利なのかもしれませんが、街での出会いがなくなっているのは面白くないな、と。街に出て、例えばスケボーをしているかっこいい人を見かけてみたり、ふと耳に入ってきた音楽がかっこよかったり、そういうのが良いんですけどね。洋服を買いに出掛けることで、昔はそういうシーンにたくさん出会えたように思うんです。今は、それが減っている気がしますね」と言う。

 

倉成は、西さんの言うそんな街の空気を吸って大人に近づいた一人だ。

まるでお兄さんの話を聞くように、最近のことや、お店の話など倉成さんは真剣に耳を傾けていた

「中学、高校と、同級生には変わった人が多かったですね。福岡や久留米の医者の息子が多く、おそらく豊富だったであろうお小遣いを生かしてたくさんのことを吸収しては、ぼくの知らないカルチャーの話をたくさんしてくれました。中三の頃、外国人の英語教師から『自分の将来の夢を英語で教えてください』と言われた時、ある友人は『バイヤー』」と答えていましたからね。25年も前、しかも中三で、バイヤーという言葉も意味も、普通は知りませんよね。ただ、そんな友人たちに囲まれて過ごした時間が今、本当に宝になっています。これまでデザインに関する仕事にも数多く携わってきましたが、知識がないと相手と話せませんし、ぼく自身においてもデザインの引き出しは生まれません。中学、高校時代に友人たちから教えてもらったカルチャー、そのカルチャーに実際に触れられる店。それらの知識や経験がなかったら、全く違った仕事を選んでいたと思います。モノを作る、デザインっていいなと気付かせてくれたのは佐賀のお店です。感性を育んでくれるようなモノが地元で買える、売っているお店が続いているというのは、とても大切だと思います」。

 

text by 山田祐一郎, editing & photographs by 堀越一孝

【DATA】

HARVEST
住所 佐賀市城内2-2-2
電話 0952-26-5832
営業 12:00〜20:00
定休 水曜

https://www.facebook.com/HARVEST-saga--235627996524597/

ページ上部へ