はじめての焼き物づくり

はじめての焼き物づくり

column 22

岡垣 貴憲

September 13, 2017

佐賀県は「日本の磁器の発祥の地」と言われ、歴史的にも焼き物と縁のある土地だ。現代でも有田焼、唐津焼など、陶磁器の産地として有名である。焼き物と深いゆかりのある佐賀に暮らしているならば、一度は焼き物作りをやってみたいと常々思っていた。
そんな折に、某イベントでご一緒させていただいた料理研究家の先生のお誘いで、焼き物を作り体験の話があり、二つ返事で、参加することにした。

今回の焼き物づくり体験が実施された工房のある建屋。以前使っていた窯から伸びる煙突にも緑が生い茂る、緑豊かな環境

焼き物体験の事前説明を受けた部屋から見た外の景色。山に囲まれ、自然豊かでのどかな風景が広がる

新緑の緑がさらに濃さを増した6月上旬。
お伺いした窯元は、武雄市山内町にある「玉峰窯」(ぎょくほうがま)という窯元。温泉で有名な武雄市の市街地から有田方面に向かう山間ののどかな場所だ。
玉峰窯は「銀河釉」というオリジナルの釉薬を使い、表面が独特な輝きをもつ焼き物が特徴的な窯元。この焼き物体験に参加した理由に、その独特な作風に魅せられた部分も大いにある。

玉峰窯の作品の表面。銀色の紙吹雪を散りばめたような模様を、夜空に輝く銀河になぞらえて「銀河釉」と命名している。

この焼き物体験のイベントは従来秋に開催されているのだが、人気のために特別に6月に開催したとのこと。毎回参加されている人もいれば、私のように初めての人もいた。

「ろくろ」を使って粘土を成形する手法と、板状の粘土から成形する「たたら」という手法の2つが体験できるという。私は迷わず「ろくろ」を選んだ。初心者がろくろを使うと、必ずと言っていいほど失敗してしまうのはテレビ番組でよく見る光景だ。私もそのように失敗してしまうのだろうか。期待と不安を抱きながらろくろの作業場へ。

手際よく芯出し作業をやってくれているスタッフ

手伝いに来ていた有田窯業大学校を卒業したボランティアスタッフが中心を出す「芯出し」という作業をやってくれ、私はそのあとを引き継ぐようにしてろくろに向かった。
……む、むずかしい。自分なりの試行錯誤でいろんな手のポジションを試すが、粘土が思う通りの形にならない。スタッフがいとも簡単に行っていた芯だし作業が、かなりの腕力と同時に、手のひらから指先の絶妙な力加減と、左右の手の位置のバランスが必要だとわかった。一見簡単に見える作業も、何度も粘土と向き合ってきた経験の上で行われていたのだと身を持って体験した。

スタッフの指導を受けながら真剣にろくろに向き合う参加者のみなさん

最初はなかなか思うように成形できなかった。しかし、スタッフの方々から丁寧にろくろのコツを教えてもらううちに、思いのままとはいかないものの、それなりに要領がつかめてきた。
そこからはイイ感じの土の感触に癒される余裕も出てきて、ろくろに向かう行為がとても楽しかった。時間と財布に余裕があれば、身近な場所に工房を作って毎日でもろくろを楽しみたいとさえ思った。

次はたたら。

スタッフの方が作った板状の粘土を受け取り、いざ作業台へ

広めの作業台を囲むように座り、談笑を交えなが作業に没頭する今回の参加者

今回たたらでもいくつか作品を作った。幼少期に幼稚園などでやった粘土遊びそのもの。ろくろとは違ったもどかしさに悪戦苦闘する反面、懐かしい粘土いじりに飽きることなく、時を忘れて作品づくりに没頭した。

工房に隣接したテラス席で、午前中の焼き物づくりの話題をバーベキューのおかずに

スタッフが手際よく焼く肉が、次から次へとテーブルに運ばび込まれ、あっという間にお腹いっぱい

お昼は参加者のみなさんとバーベキュー。工房の傍に現在は使っていない窯があるのだが、その窯で使う薪を置いていたスペースを利用したテラス席がある。そこで、焼いてもらった肉や野菜を囲み、自分が作った作品や、悪戦苦闘した作業についてああだこうだと話しながら、のんびりとしたロケーションで食事の時間を過ごしとても楽しかった。

午後、作品作りの続きを行った後、今回の焼き物作り体験の締めに、玉峰窯の中尾哲彰先生のろくろパフォーマンスが行われた。

中尾先生の芯出しの様子

ろくろの上にあった粘土の塊が背の高い壺の形に

ろくろの上に置かれた粘土の塊が、中尾先生の両手の中でどんどんと縦に伸び、さらにその縦長の粘土に手を入れ、腕を入れて中の空洞をつくり、口の方をだんだんと細く成形していって背の高い壺が完成。ものの10分程度の出来事に、参加者全員が息を飲み完成を見守った。
 そしてここからが圧巻!せっかく作った壺を惜しげもなく縦に真っ二つ。すると、壺を形作っていた粘土が見事にムラなく同じ厚さになっているのが見て取れる。お見事!

できたての壺を惜しげもなく真っ二つに

最初から最後まで、刺激的で有意義な体験をさせてもらった。今後、陶芸にハマっている自分が容易に想像できる。

今回作った作品の出来上がりは2〜3ヶ月後とのこと。その作品の出来上がりと、玉峰窯の中尾先生の作品や人となりについては、何ヶ月後かに改めてご紹介したいと思う。

DATA
玉峰窯
住所 佐賀県武雄市山内町立野川内
TEL 0954-45-2147

http://www.gingayu.com

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