森の中の小さな美容室

森の中の小さな美容室

column 23

恵良 五月

October 10, 2017

私はショートヘアにしています。ですから髪を切って1カ月もすると、頭が重たく感じてきます。けれども、髪を切るためだけに山を下りるのは時間がもったいない。山を降りて美容院に行くと、半日がかりになってしまいます。ですからこれまで、前と横、そして襟足の髪は鏡を見ながら自分で切っていました(襟足は合わせ鏡をして見ます)。でも、後頭部の段カットは自分では難しく、セルフカットでごまかせるのも、せいぜい半年が限度です。

半年ほど前、ダンナさんが「松梅におしゃれそうな美容室ができたよ」と教えてくれました。松梅地区は、私の住む山の中腹からふもとのエリアで、下山して買い出しに行くときに通るところです。通りがかりにその場所を見てみると、えんじ色の屋根に真っ白な壁のかわいらしい美容室ができていました。入口のドアやステップの木の使い方もすてきです。周囲に植えられた木や植物を見ても、オーナーさんがこのお店を大切に作り上げたことが伝わってきました。

でも、ここ10年ほど、髪を切るときは千円カットだった私は「ほんとにおしゃれだから、高級なのかなあ」としばらく、遠巻きに様子をうかがっていたのです。そのうちに、帽子をかぶらなければ人前に出るのがはばかられるほど、頭がもっさもさになってしまったので、ついに意を決して、その美容室に行ってみることにしました。
美容室の名前は「Lumino」。イタリア語で「小さな灯り」とか「輝く」「照らす」という意味だそう。そして、オーナーのお名前が「ルミさん」だから「ルミの(美容室)」。

オーナーの秋田ルミさん

内装にも木がたくさん使われていて、ほんのり木の香りがするし、椅子の前は大きな窓で、木々の緑がたっぷりと目に入ってきます。ですから、店内にいても森の中にいる感じ。とっても心が落ち着きます。

椅子の前には大きな窓

椅子に座ってまず一番に、私は、ルミさんにお礼を言いました。
「近くにすてきな美容室ができて、ほんとによかったです。ご近所の女性たちも、喜んでいらっしゃるでしょう?」
すると
「来てくれたおばちゃんたちが、どんどんお友達を連れてきてくれて、すごくうれしいです」
というお答え。

でも、ルミさんが山に美容室を作ろうと思ったのは、もともとは、地元の方々のためというより、街の人たちのためだったそうです。ルミさんのご自宅は松梅地区ですが、この美容室ができる前は、市内の美容室で働いていました。そこでついてくれたお客さんが山のこの美容室に来て、日常から離れた自然の中でリラックスしてくれたら、という想いで作ったそうです。

そのお話を聞いて、私は、移住6年目にして自分が知らず知らずのうちに山の人になっていたことに気がつきました。「街の人のため」なんて、思いも寄りませんでした。「地元に美容室できて、よかったー!」としか思っていなかった…。木々に囲まれていることが、私にとっては日常になっていたんです。言われて見れば、そうですね。近くには熊の川温泉もある。松梅地区は、散策するにも見どころがたくさん。髪を切るついでに、ちょっとした小旅行を楽しめるんですから。

松梅中学校と美しい棚田の眺め

眼鏡橋

焙煎珈琲の一刻舎

熊の川温泉 夢千鳥

ルミさんは中学生と高校生の二人のお嬢さんを持つお母さん。お母さんなので、母の気持ちがわかっています。料金設定が、ジュニアカットから小中学生カット、高校生カットと分かれていて、とっても良心的です。うちの娘も中学生なので、髪を切っていただきながら、子育て談議に花が咲きました。ルミさんのご実家が富士町の農家さんということもあり、農業の話でも盛り上がってしまいました。
ルミさんは、カットはもちろん、シャンプーやマッサージも、本当に丁寧です。自宅のシャンプーとは違ったちょっと高級そうなシャンプーの香りって、なんだかリッチな気分にしてくれますよね。毎日のピーマン袋詰め作業でゴリゴリになった私の肩も、ルミさんのマッサージでだいぶ軽くなりましたよ。
私にとってロケーションは「日常」ですが、そうやって心を込めてケアしていただいたことで、農作業三昧の「日常」から離れて、すっかりリフレッシュすることができました。きっと、近所のおばちゃんたちも、そんな時間を満喫しているのでしょうね。

Luminoは、街の人も、地元の人も贅沢な時間が味わえる、そんな美容室です。

DATA
佐賀市大和町松瀬2643-4
美容室「Lumino」
0952-64-2070
OPEN 9時~18時
CLOSE 月曜日・第3日曜日

https://www.facebook.com/Lumino63/

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