無料なのに充実しすぎで申し訳なくなる施設。

無料なのに充実しすぎで申し訳なくなる施設。

column 02

March 16, 2016

やっぱり信じられなかった。本当にタダで良いのか。
こちらが申し訳なくって気まずくなるくらい、その施設は充実していた。

 

年が明けて、1月上旬。ぼくは福岡方面から唐津市内の中心地を通りすぎ、鎮西町名護屋の地に入った。かれこれ7、8年ぶりだ。初めてここにやって来たのは大学時代。それから数えること3度目の名護屋入りである。この日、名護屋界隈を巡る予定になっていて、最初に案内人の方に連れられてきたのが、「佐賀県立名護屋城博物館」だった。

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周囲の自然と調和するような建物。(C)佐賀県立名護屋城博物館

「今から向かう場所は無料なんですよ」と伝えられていたので、正直、それほど期待はしていなかった。そのことを、この場を借りて全力でお詫びしたい。

 

「本当にタダで良いんですか」
帰る頃には、そう何度も口にしていた自分がいた。

 

「佐賀県立名護屋城博物館」が完成したのは、1993年。20年以上前から存在するその建物はとても威風堂々としている。設計したのは「前川設計事務所」、ル・コルビュジエに師事し、戦前・戦後を通じて日本近代建築の歴史に大きな足跡を残した建築家・前川國男が設立した設計事務所だ。周囲の自然と調和するよう、山のように空に向かってそびえ立つのではなく、小高い丘のように地に沿って寝そべるような、そんな横長な建物だった。

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ガラス貼りのエントランス。

この地、名護屋の一帯は、豊臣秀吉が朝鮮出兵(文禄の役・1592〜1593年、慶長の役・1597〜1598年)の拠点として築いた「名護屋城」の城下町だった。ただ、現在は名護屋城の姿はなく、その跡地には石垣が残されるのみ。仮にそんな事実を知らない人がこの地をふらりと訪れたら、ひょっとすると何も気に留めることなく、通り過ぎてしまうかもしれない。それくらい、名護屋城の城跡は、静かにこの地にある。
「佐賀県立 名護屋城博物館」もまた、そんな土地に寄り添うように佇んでいた。

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趣深い有田焼のタイル。 右)吹き抜けのエントランスホール。

ただし、館内はこの地の歴史を伝えるため、さまざまな角度からの展示がなされていて、見応え十分だ。

 

最初に目を引くのが、受付から2階へとつながる高い天井。その後に続くフロアは鋭角を組み合わせた立体的な造りになっていて、表情豊かだ。壁には有田焼のタイルが贅沢にあしらわれていて、文化を後世に伝えるための建物という風格がある。
当時の名護屋一帯を再現したジオラマを見て、如何に大規模な出兵で、有名な戦国大名たちが集っていたかを知り、また、陣羽織や陶器に息づく仕事に大陸の文化水準の高さを学んだ。特にぼくには、名護屋城がもたらした文化的な側面が大きく心に響いた。「カルチャー」「アート」に興味がある人なら、きっと同じように、時間を忘れて楽しめるはずだ。

 

博物館を後にして、いよいよ名護屋城跡地を実際に巡るわけだが、ぜひその前に「バーチャル名護屋城」について知ってほしい。この続きは、次回のコラムで。

 

(edit.山田祐一郎 / 2016.01.07)

佐賀県立名護屋城博物館
住所 佐賀県唐津市鎮西町名護屋1931-3
電話 0955-82-4905

http://saga-museum.jp/nagoya/

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