神埼の流しそうめんは、決して風流ではないが、スピード感と優しさに溢れている。

神埼の流しそうめんは、決して風流ではないが、スピード感と優しさに溢れている。

column 14

馬場 正尊

October 17, 2016

神埼の日隈山公園から佐賀市内に向かって車を走らせていた。快晴の下ではためくノボリが視界に飛び込んできた。

 

「流しそうめん」

 

ちょうど昼飯時、息子も腹が減ったと騒ぎ始めている。車の窓を開けてみると川のせせらぎ音も聞こえてきた。涼しさを誘う最高の効果音。せせらぎのそばで流しそうめんとは最高に風流だ。なんて夏らしい、なんて佐賀らしい時間の過ごし方。

僕たちは導かれるように、流しそうめんののぼりのほうへ吸い寄せられていた。

 

そこで目にした流しそうめんがこれだ。

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到着したのは、想像とは異なるなんとも無機質なそうめん流し場

まったく風流ではない。

頭の中では半分に割った竹筒を流れてゆくそうめんを想像していた。しかしそれはステンレスの雨樋のようなものだった。

 

涼しげなせせらぎのそばで食べるのだと思っていた。しかしそこは倉庫の中だった。

イメージとかけ離れた風景に僕はたじろいだが、息子の方はお構いなしに、逆にそのメカニカルなそうめん流し装置に向かって走っていき、次の瞬間にはお店の人に箸とつゆの器を渡されていた。

もう後戻りができない。

 

子供にとっては、流れていくそうめんをキャッチして食べるのが流しそうめん。樋が竹であろうがステンレスであろうが関係ない。ほかの子供たちも真剣に流れるそうめんのキャッチに勤しんでいる。しかも、かなりのスピードで流れてくる。下流には残骸のようなそうめんしか流れてこないので場所取りを間違えるとありつけない。子供たちにとってはリアルな参加型ゲームであるのだ。むしろ、竹じゃなくてステンレスなのがそのゲーム性を助長しているようにも見える。

 

僕も風流じゃないとか素材感がどうとか言ってないで、子供たちと一緒に目の前の現実を受け入れることにした。

実は、結構テンションが上がっていた。人間なんてそんなもんだ。

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息子は、とにかくそうめんが流れて来ることに夢中。風流なんて子供には関係ない

うまい。

さすが神埼そうめんだ。しっかりとしたコシ、キレのある喉ごし、麺に絶妙にからむつゆ。生姜がぴりりと効いている。

僕らはそこが倉庫の中であるということを忘れ、ひたすらそうめんを食べた。

 

建築が専門の僕は、そうめん流し装置のメカニズムに興味を抱いた。と言うのは、キャッチから逃れたそうめんがいったいどこに消えていくのか、流れる水の行き先はどこなのか、それは定かじゃないのだ。

 

理系の僕はすっかり研究モード、座り込んで観察を始めた。するとそうめんをキャッチするトラップが作られ、水はポンプによって循環されているではないか。かなり完成度の高いそうめん流し装置である。お金もかなりかかっているだろう。ここまでやるなら竹筒でもいいんじゃないか、というツッコミはとりあえず横に置いておこう。合理的なのか非合理なのかがわからないこの装置を、いつのまにか僕は愛おしく感じているのだった。

見方によっては適当なのか凝り性なのか、よくわからない佐賀人の地質を象徴しているようにも見える。

 

それにしても、どんな人が作っているのだろう?

僕はこの機械を作った人に興味が湧いて仕方がない。そうめんはすだれの向こう側から流れてきている。裏舞台を見るのは反則だということはわかっている。でも僕は好奇心にはめっぽう弱い。我慢出来なくてそのすだれの向こうに首を突っ込んだ。

「みるな!」と、怒られるかなと思ったら、愛想のよいおばさんが

 

「あーどうぞどうぞ」

 

極めて気さくに迎え入れてくれた。

そこで見た風景がこれだ。baba06_03l

見せてくれた方がいいのでは?と思うような感動的な光景が裏では繰り広げられていた

おじさんたちが、灼熱の中、巨大な鍋を前にして、大汗をかきながら、必死の形相でそうめんを湯がいている。僕らが食べたそうめんは、この過酷な作業あってこそのものだった。おじさんたちありがとう。絶妙な湯がき加減の秘密はここにあった。

メカニカルなそうめん流し装置と、ヒューマンなそうめんを湯がくおじさんたち。そのギャップこそが、このお店の醍醐味だ。

 

一体どれだけのそうめんを食べたのだろう。僕ら家族はお腹いっぱいになって、このファンキーな流しそうめんをあとにした。

 

edit by 馬場正尊

DATA
有限会社 井上製麺
住所 佐賀県神埼市神埼町的1779
電話 0952-52-2625
営業時間月~金 11:00~14:00
土・日・祝 11:00~15:00
※季節により変更

http://www.iimen.com/top/index.html

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