鏡山から眺める空と海。自然に溶け込むことが、音を生む

鏡山から眺める空と海。自然に溶け込むことが、音を生む

column 15

佐藤 和哉

November 16, 2016

生まれ故郷である唐津市お気に入りの場所を聞くと、佐藤は「鏡山展望台に行きましょう!唐津の中で最も好きな景色が見れる場所です」と、元気に答えてくれた。

 

標高284mのどこから見ても台形で美しい鏡山は、唐津シンボルの一つ。頂上には、ここが山の上であることを忘れるくらい大きな公園が広がっていた。佐藤は、慣れた足取りで木漏れ日の気持ち良い遊歩道を歩く。

 

「展望台に行く前に、ちょっと寄りたいところがあります。佐用姫伝説って知っていますか?ここ鏡山は、その物語の舞台と言われています」

 

綺麗に整備された遊歩道を進むと、可愛らしい鳥居と本殿の佐用姫神社に到着した。鳥居に着くと、佐藤はピタリと話を止め、ゆっくりと本殿に向かってお辞儀をした。無駄のない所作と容姿は、やはり現代の若者と纏う空気が異なる。

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木製の小さな鳥居や砂利の敷石も可愛い佐用姫神社。新たな縁結びスポットとなっている

佐用姫神社での参拝を終え、佐藤は足早に歩き出した。遊歩道を少し進み階段を下ると、突然視界いっぱいに青が広がった。先に到着した佐藤が、空と海に溶け込む。

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一面の青の下には虹の松原が広がる美しい鏡山展望台

唐津湾の絶景を前に佐藤は全身に海風を受け、大きく深呼吸をした。

 

「どうですか?この空と海と砂浜、そして虹の松原。唐津の魅力が一望できる素晴らしい場所ですよね。僕は、この景色が本当に好きで、初めて篠笛で作った曲『舞姫』は、この光景と佐用姫伝説をモチーフにしました。

 

佐用姫伝説は、悲しい物語です。今から1450年前、朝廷の命令で朝鮮半島の任那、百済の救援に派遣された青年武将大伴狭手彦(さでひこ)が停泊地である松浦の地で身の回りの世話をしていた佐用姫と恋に落ちました。やがて出帆の時が訪れ、別離の悲しみに耐えかねた佐用姫は鏡山に駆け登り、頂上から領布を振り船出を見送ったそうです。しかし、それでも佐用姫はその悲しみに耐えきれずついには船を追って、呼子の加部島へと渡り、悲しみのあまり七日七晩泣き続け、石となってしまったそうです」

 

大好きな唐津湾を見つめ、身振り手振りを交えながら話す佐藤の表情は、楽しかった思い出を話す少年のように柔らかく和かだった。

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全国で演奏するようになった佐藤は、訪れる土地で語り継がれる伝説を知ることが楽しみの一つだという

鏡山の遊歩道を歩く中、佐藤はトレードマークでもある服装と曲の関わりについて話をしてくれた。

 

「どこかに出かけたりする時には、できる限り笛を持って出ます。いつ曲のインスピレーションが降りて来るかわからないじゃないですか。その時に応えられるよう、服装も常に気をつけています。服は、自分と外をつなぐもの。だから、自然と溶け合うことができるような服装を選んで外出するようにしています。洋服だと、やっぱり篠笛にはしっくりこない。もちろん、普通の洋服を着る時もありますけどね(笑)」

 

佐藤は、篠笛と一体であり、共に自然に溶け合い向き合っているのだ。

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text by 鈴木暁子, photographs by 堀越一孝

DATA

鏡山展望台
住所:佐賀県唐津市鏡山山頂
電話:0955-72-4963
鏡神社
アクセス:虹ノ松原から徒歩約50分-
住所:佐賀県唐津市鏡6052-20
電話:0955-77-0703

鏡山
アクセス:JR筑肥線虹「松原駅」から徒歩90分
マイカー利用の場合:長崎自動車動多久ICから車で40分
バス利用の場合:唐津大手口バスセンターから昭和バス宇木・半田行き乗車、バス停入口下車
駐車場:175台(無料)
お問い合わせ 電話:0955-72-9250

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