一茶一菓

一茶一菓

column 33

岡垣 貴憲

February 01, 2018

嬉野茶時というプロジェクトがある。
「嬉野温泉」「うれしの茶」「肥前吉田焼」という嬉野で長きに渡って息づいてきた3つのコンテンツに横串を刺し、新しい魅せ方で再構築して、嬉野市内外にアピールする気鋭の集団だ。温泉、お茶、焼き物に携わる方々だけでなく、料理人、菓子職人、デザイナー、テレビ関係者など嬉野で頑張る多種多様な人々がこのプロジェクトに集う。

秋が深まりつつある週末に「嬉野デザインウィーク」というイベントがあり、そこで嬉野茶時が「一茶一菓」という食事会を開催することを聞きつけ参加してきた。

「一茶一菓」が開催された和多屋別荘

正面玄関から入ってすぐのラウンジでは嬉野茶時を紹介する展示が行われていた

会場は嬉野の歴史ある温泉宿「和多屋別荘」内の「サヴール・ドゥ・スイメイ」というラウンジ。テーブルや椅子の素材や形状、窓の配置やそこから見える景色や光、照明の形状や配置などのデザインへのこだわりが、心地よい緊張感を与えてくれる。

「一茶一菓」は今回が初の試み。嬉野茶時のメンバーである嬉野茶の生産者と、嬉野市内の菓子職人が1対1でペアを組み、お菓子とお茶のマリアージュを楽しんでもらうという企画。今回は3組のペアが「秋」をテーマにお茶と菓子を振舞うこととなっていた。

一茶菓「豊穣の月」
(茶師:太田裕介 × 菓子:井上賢一郎)

黒い磁器のプレートに柿の羊羹や、干し柿をクリームチーズを合わせたものなど、色んな柿が楽しめる一皿。
嬉野紅茶と一緒にいただき、やさしい甘さがなごませてくれた。

二茶菓「深秋」
(茶師:副島仁 × 菓子:坂本卓也)

曲げ物の中にサクサクした食感のクロワッサンが4つ。小さな器に入ったお茶のソースをかけて食べる。
「お茶をあえて飲ませない」という裏切りが美味しさを引き立たせてくれた。

三茶菓「冬仕度」
(茶師:青柳貴信 × 菓子:澤野典子)

肥前吉田焼の皿に、りんごのコンポートやモンブラン風のミニケーキが乗った一皿。さっぱりとした梅干し入りの番茶で全てを締めくくる。

洗練された会場の内装がイベントの特別感を増長させ、それぞれの菓子とお茶が運ばれてくるたびに沸き起こるワクワク感がとても楽しかった。

清潔感ある純白の衣装に身を包んだスタッフが菓子とお茶を運んでくれる

運ばれたお菓子を前に緊張気味の表情もゆるむ

次のメニューが運ばれる合間、先に食した菓子とお茶の感想に花が咲く

サクサクのクロワッサンにお茶のソースをかけて食べる二茶菓の演出は、菓子作りに参加しているような楽しさがあった

隣の席には地元嬉野から参加の川島瑞紀さん。地元なのに知らなかった嬉野の魅力を発見したという彼女も、満面の笑みで菓子とお茶を食す。対外向けにPRするためのイベントと思って参加したが、地元の住民に対する良い刺激にもなっているようだ。

菓子を口に運ぶ前の川島さん。終始笑顔。

一茶菓が終わった時には、一つ目を制覇した満足感から「あと2つもくるんですよね?」なんて期待しかない感じで隣の方と話をしたが、二茶菓が終わった時には、「もう次が最後なんですね…」なんて名残惜しさが急に訪れ、そして全てが終了。夢の世界の余韻に浸りながら席を後にした。

今回のイベントは3日間全9回開催されたが、初日の1回目のみ茶師と菓子職人に加えて、くまもんの産みの親として有名な放送作家 小山薫堂氏も同席。第一線で活躍される敏腕企画マンならではの視点からの感想やアドバイスが勉強になった。

「温泉につかりながらお茶が楽しめる器を開発してみては?」といった嬉野茶時のコンセプトにズバリのアイディアを提案するなど、
目からウロコな話が満載だった小山薫堂氏(写真中央)のコメント

イベント終了後、二茶菓を担当された茶師の副島仁氏を直撃。

嬉野茶時では嬉野茶寮のリーダーも務める副島仁氏。
夏に東京で開催された某イベントでご一緒させていただいた松田二郎氏が働いている副島園の四代目。

昨年から構想としてあたため続けた「一茶一菓」を、夏に開催されたイベント「うれしの晩夏」からの流れで始動。茶師と菓子職人のペアを決め、試作を重ね、関係者へのプレゼンをし、そして迎えた当日。吟味に吟味を重ねた仕事をやりきった充実感を覚えた一方、今から冬にかけて待ち受けている様々なイベントへ挑戦する緊張感も絡み、闘い続ける男のかっこ良さを感じた。

嬉野茶時のメンバーと、今回の「一茶一菓」でプレイヤーとして活躍した茶師と菓子職人が最後にあいさつ

当イベントに限らず「嬉野茶時」の取り組みはほぼ全ての地元の有志で企画から実施まで執り行っている。東京のイベント会社が取り仕切っているかのように洗練されたイベントが、地元の力で実施されていることをとても素晴らしいと感じた。
また、発信する側の一体感も重要。お茶を極め続ける茶師も、かつては温泉や器については知らないことだらけだったと言う。お互いがお互いを知ることでみんなが一体となり生まれる新たな魅せ方の可能性の大きさを感じた。

今後も嬉野茶時の取り組みから目が離せない。

DATA
嬉野茶時
ホームページ https://www.ureshinochadoki.com
Facebook https://www.facebook.com/ureshinochadoki/

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