地元「古湯」への愛に溢れる名物女将

地元「古湯」への愛に溢れる名物女将

column 35

岡垣 貴憲

February 26, 2018

平野が広がる佐賀市の中心地から北部の山あいに、「古湯」というひなびた温泉地がある。周りを山に囲まれた小さな集落に、十数軒の温泉宿が軒を連ねる。

宿が左右に立ち並ぶ小道を進んでいくと、「古湯では知らない人は居ない」といっても過言ではない名物女将 岸川美紀子さんが切り盛りする「千曲荘」がある。
「生まれも育ちも古湯」という女将は、「ずーっと古湯におるけん、世の中のことは何にも知らんとですよ」と言う。現に旅館は定休日無しは当たり前なのだが、「世の中の事を何も知らない代わりに、古湯のことは何でも知っている」の裏返しとも取れるほど、地元に対する愛が深い。

「良い噂を聞かない他県の業者が古湯の競売物件の購入に動いている」との噂を聞きつけた女将は、地域のみんなを巻き込んでその物件を落札。そこをみんなで「古湯KITCHEN10(キッチンテン)」という飲食店に改装し、運営にも携わっている。「平和な古湯を守りたい」「地域のみんなとやっていきたい」「食べる場所が無いという地域の声に応えたい」という古湯への愛が詰まったお店だ。
お店のロゴが入った茶色いエプロンを羽織り、旅館業が忙しくない日中はほぼ毎日そこでお客様をもてなす。昼は飲食店、夜は旅館と、一日中忙しそうな女将は「私はマグロやけん、動かんかったら死んでしまう」と笑いながら言い放つ。

たまに近所の人から「儲からんのに何のためにやっているのか?」と言われるそうだが、そこで放つ女将の言葉はこうだ。

「金儲けのためではなく、人儲けのためにやっている。60までは人に助けてもらったので、60からは人を助けることをやっていきたい」と。

時に厳しく、時に優しく、地域や地元民への愛に溢れた名言だ。

そんな女将の周りには、古くから地元に住まう人はもとより、そこに移住してきた人など、古湯を愛する人々が集う。「古湯の名物女将」と呼びたくなる所以であろう。

DATA
千曲荘
〒840-0501 佐賀市富士町古湯878
TEL:0952-58-2047

http://chikumasou.sagafan.jp/

ページ上部へ