重ねる「願い」と「思い」 ~角打ちのある酒屋「石丸酒店」~

重ねる「願い」と「思い」 ~角打ちのある酒屋「石丸酒店」~

column 39

村岡 昌一

March 14, 2018

佐賀城二の丸跡に再建された佐賀の偉人・鍋島直正公の銅像が見つめる先に、酒を楽しめる「角打ち」を併設した酒屋がある。佐賀の銘酒を数多く揃える石丸酒店。1965年(昭和40年)に開店した地元に根づく酒屋だ。

店主の石丸義己さん

店主の石丸義己さんは言う。「以前は店内に角打ちがありましたが、お客さんから『買い物しづらいんです』という声があったので、隣りを角打ち専用にしました」。

石丸酒店 右がお酒を販売する店舗、左が角打ち

角打ちは16時にオープンする。暖簾をくぐって、冷蔵庫の酒を買って飲んでもいいし、すぐ横の石丸さんの店で美味しい佐賀酒を選んで持ち込んでもいい。おつまみは、さばの味噌煮などの缶詰やピーナッツ、魚肉ソーセージなどのほか、厚揚げや冷奴もある。注文すると、石丸さんのおかあさんが、皿に盛り付けた缶詰や豆腐を温めて席まで運んでくれる。テレビでは大相撲中継が流れ、勝負がつく度に角打ちの中はひとしきり盛り上がる。

カウンターに立つ石丸さんのおかあさん

客は、近所の常連さんが多く、時折、大学生のグループも訪れる。近くの放送局の方も仕事を終えてよく来るのだそうだ。夕暮れから宵へと夜に進むにつれ、10人ほどで満席になる角打ちは、にぎやかな声と笑顔で満ちていく。おかあさんは、お客さんを静かに見守る。

角打ちを楽しむお客さん

「お財布にやさしくて、毎日でも来られる。ひとりで来てもみんな仲よくなれる。そんな場所であってほしいですね」。石丸さんが言うとおり、ここはオープンでフラットな空間だ。席につけば居場所となり、周りの人とは肩書きなど関係なしに酒を楽しむ間柄になれる。

この夜のおつまみは揚げ豆腐

角打ちは、佐賀の多くの酒屋からなくなったが、なぜ、石丸酒店は続けられるのだろう。石丸さんは「うちはお客さんに恵まれているからですね」と、にこやかに、そして力強く答えてくれた。その言葉からは、酒だけに留まらず、酒を楽しむ時間や場所まで提供するのだという「酒屋としての誇りと使命感」があることも感じる。「いい時間を過ごしたい」という客の願いと、「過ごしてほしい」という石丸さんの思いがここで重なる。

角打ちの開店時間を迎えた頃の佐賀市城内の景色

夕陽が直正公の銅像を柔らかく照らし始める頃、石丸酒店の角打ちには今日も温かな明かりが灯り、人々が集う。こういう穏やかな日常のあることが、この上なく愛おしい。

DATA
石丸酒店
住所 佐賀県佐賀市城内2-12-15
営業時間 角打ちは16:00~
電話 0952-24-4728

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