農園に春が来ました

農園に春が来ました

column 46

恵良 五月

May 29, 2018

春が来ました。農繁期に突入です。
私たちの暮らす富士町は中山間地にあり、冬にはかなり寒くなるので、露地では白菜や大根、里芋くらいしか野菜ができません。しかし、冬は農家にとっては、ゆったりと時間を過ごせる貴重な時期でもあります。
それが3月に入ると、にわかに気持ちがザワザワし始め、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃと、朝早く目が覚めるようになります。実際には、遅霜や遅い雪が降ったりして、気ばかり焦って作業ができない日が多いのですが…。
でも、2018年の春は比較的晴天の日が続き、フランスからやって来たステファンがお手伝いをしてくれるようになったので、畑の準備がはかどりました。ステファンは、以前このコラムでご紹介した《ヤギ飼いのゆきちゃん》のダンナさんです。

春の仕事のうち、何と言っても重労働なのが、うね立ての作業。うねを立てるのは、水はけを良くして作物の根を健康に保つためで、できるだけ高うねにし、雨水が流れ落ちやすいかまぼこ型に仕上げるのが理想です。恵良農園のうね立てでは、まずトラクターで畑を耕してから、手押しの管理機で溝を掘って土を盛り上げます。

管理機で溝を掘って土を盛り上げる

次に、トンボレーキで、盛り上げた土を両側からうねにしていきます。

盛り上げた土を大きなトンボレーキでうねにする

高うねにするために、もう一度管理機で通ってさらに土を盛り上げ、再びトンボレーキできれいに整えます。土は重いし、うねは長いし、うねの本数も多いし、とても疲れる作業ですが、仕上がったうねを眺めながら風に吹かれるのは爽快な気分です。

畑一面にうねが立つと、達成感があります

うねを立てたら、雑草を防ぎ地温を上げるためのマルチというシートを張ります。

これで、苗の植え付け準備が完了するわけですが、霜の心配がなくなって苗を植え付けるまで、まだまだ気を抜くことはできません(もちろん苗を植え付けてからも気は抜けません)。強風でマルチがはがれたり、獣が入ってマルチを破いたりするので、そのたびに修繕をすることになります。

獣の足跡。足跡だけならかわいいのですが…

苗作りも春の大切な仕事です。前年利用したポットをきれいに洗って、種まき用の土を入れたら、土にくぼみをつけて種を置き、丁寧に土をかぶせます。土の深さは種の厚さの2~3倍。深すぎるとなかなか芽を出さないし、浅すぎると水やりのときに種が浮いてきてしまいます。

芽を出したズッキーニ

今回、せっかく蒔いたかぼちゃの種を、何者かににみんな食べられてしまいました! また、蒔き直しをしなければなりません。おそらく、冬の間にときどき見かけたねずみたちの仕業でしょう。
山で農業をしていると、獣害によくあいます。この冬は、里芋をほとんど食べられてしまいましたし、ご近所さんも、植えつけたばかりのジャガイモの種イモをみんな食べられてしまったそうです。
それでも、動物たちに対して、怒りの気持ちは湧いてきません。これが人間から受けた被害だったら、きっとはらわたが煮えくりかえる思いをするに違いありません。動物だと、「仕方ない」と受け入れられる。彼らも必死で生きているんだ、と思えるからでしょうか。彼らが本当に無邪気で、悪意がまったくないからでしょうか。

食べられた種。中身だけきれいに食べられています

怒りが湧いてこないとはいえ、獣害にあうと、予定していた出荷ができなくなったり、壊された箇所の修繕に時間を取られたり、種を買い直したりするので、経営的にはダメージを受けます。
これから暖かくなってくると、野菜もぐんぐん育ちますが、草も次々と芽を出し、どんどん生い茂ってきます。獣との闘いに加えて、草との闘いが始まるのです。

けれども山は、そんな私たちを励まそうと、たくさんの恵みを与えてくれます。山菜は、山の春の恵みです。この季節、山の直売所には『ふき』、『タラの芽』、『わらび』『コシアブラ』、『筍』など、山菜がたくさん並びます。恵良農園でも、アクの少ない山菜『こごみ』を栽培しています。天ぷらのほか、湯がいてドレッシングやマヨネーズで食べてもおいしいんですよ。

萌え出ようとしているこごみ

左側がこごみ

 

うぐいすの声が響きます。木々は、きみどり色の若々しい芽をつけ始めました。林の中からキツツキが木をつつく「コココココ」という音も聞こえてきます。山で農業をしているとたくさんの苦労もあるけれど、私はやっぱり山が好きです。

DATA
佐賀市富士町 恵良農園

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