聖地巡礼者が集うステーキ専門店

聖地巡礼者が集うステーキ専門店

column 52

岡垣 貴憲

August 07, 2018

「聖地巡礼」という言葉をご存知だろうか?

本来の意味は「宗教上の聖地や霊場を信者が参拝して回ること」だが、最近の日本ではアニメや漫画の舞台となった土地や建物を、熱心なファンが「聖地」と称して訪れることを指すことが多い。

佐賀県北西部の玄界灘に面する唐津(からつ)市。唐津城、唐津焼、唐津くんちなど、歴史ある史跡や文化が根付き、玄界灘の海の幸や、上場米や様々な果樹などの山の幸に恵まれたこの街は、ここ数年、若者たちを中心に世界各地からの「聖地巡礼」で活気付いている。

主人公の勇利がランニングするシーンなどで出てくる舞鶴橋と唐津城

勇利の実家「ゆ〜とぴあ かつき」のモチーフとなっている鏡山温泉

聖地と称する元となったのが「ユーリ!!! on ICE」というフィギアスケートを題材にしたアニメ作品。そのアニメの舞台が、ここ「唐津」をモチーフにした「長谷津(はせつ)」という街だ。アニメの序盤、長谷津の街でストーリーが展開するのだが、唐津城や唐津駅、松浦川など、唐津を知る人なら「あっ!この風景はあそこだ!」とわかるシーンがふんだんに登場する。
そんな「聖地」を巡る人たちが集う店がいくつかある。その中でも最高の賑わいを見せるのが、唐津駅からほど近いステーキ専門店「キャラバン」。“ミシュラン一つ星”というお墨付きが証明する味とサービスは言うまでもないのだが、そんな同店がアニメで熱いのだ。

ユーリグッズで埋め尽くされた個室では、ファンの方々が思い思いのポーズで記念撮影を楽しめる

寄せ書きノートには巡礼者の方々の想いがびっしり。英語で書かれたメッセージもあり、ワールドクラスの人気も垣間見える。

お手洗いに向かう通路にグッズや久保先生直筆の色紙がズラリ

ゴールデンウィークを利用して「キャラバンに行くぞ!」と思い立ち、予約の電話をいれて訪問した。
久々の訪問ではあったが相変わらずの人気ぶりで、店内のいたるところでアニメのキャラクターグッズに遭遇する。購入して収集されたグッズの品揃え以上に、アニメとのコラボイベントの時に使用したキャラの等身大パネルや、原作者の久保ミツロウ先生直筆の色紙など、一般には入手困難なグッズがたくさん置かれている。

そんなグッズと記念撮影をしたり、座席でアニメについて談笑するお客様を、時には優しく見守り、時には派手なパフォーマンスを絡めておもてなしをするのが、キャラバンのオーナーシェフ河上彰範氏。ファンの間では「シェフ」の愛称で親しまれている。

弾むトークで盛り上げながらお客様をもてなすシェフ

シェフも相変わらずで、お客様の目の前で調理するタイプのカウンターの中で、抜群のトークと調理パフォーマンスでお客様をもてなす。その中でも「ユーリ」のファンにはサービスが手厚い。料理を待つお客様の前には、お客様各自が推しているキャラクターのグッズをシェフ自身が並べ、それぞれの席でグッズの撮影会が始まる。

巡礼者の目の前に並べられた推しキャラのグッズを色んな角度から撮影し、ベストショットを狙う

ファンの方が手作りされたオリジナルフィギュア。衣装も手作り。アニメとシェフへの愛を感じる贈り物

私の席の隣にいた女性3人組も、当然のようにユーリのファンで、目を輝かせながら店内でのひと時を堪能されていた。仲の良さそうな3人組なのだが、実はそれぞれがバラバラの出身地。大阪、兵庫、滋賀と同じ関西圏であるのだが、兵庫と滋賀の方は関西方面で落ち合って二人旅でのご来店。大阪の方はまた別で、お一人でのご来店。
そんな3人はシェフの計らいで、大阪の方を真ん中に、兵庫と滋賀の二人が挟むように着席。アニメの力なのか、シェフの力なのか、一期一会かもしれない唐津での夜を3人で仲良く談笑している姿が、非常に微笑ましく見えた。

カウンター越しにカメラを構えるみんなの目の前で、フランベしながらのパフォーマンス

鉄板での調理の際にフランベするシェフのカッコイイパフォーマンスがある。そこで、iPhoneを持っているお客様にはスロー撮影を勧め、カウンターのお客様全員が儀式のようにカメラを構える。「3、2、1、スタート!」の合図で動画の撮影を始めるのだが、言われた通りのタイミングで撮ると、ババババッ!と一瞬で行われた炎を消すアクションが、みんなに自慢したくなるようなカッコいい動画として記録される。
さらに美味しいお肉料理に舌鼓。お肉の食べ方も色々とレクチャーしてくれて、それぞれがいちいち美味しいのだ。ただただ満足するしかない。

言わずもがな、お肉の美味しさは絶品

アニメの世界を表現したメニューもある。薄くスライスした霜降りの佐賀牛を使い、スケートリンクに見立てた鉄板の上で一気に炙ってお出しする。

また、東京からご来店の男性二人組には、「屋久島に行ってみるべき!」と自身の旅の想い出とそこで得られた経験について切々と語る。端から聞いていた私もいつの間にか屋久島に興味津々。
また、「世の中で一番美味しいものは牛肉。その中でもヒレ肉が一番だ」とも言い切る。それくらい自店が出す肉のクオリティと調理に自信をもっている証だ。すばらしい心持ちだと改めて思ったのと、当日私は何を思ったか赤身の肉を注文していた。赤身も十分美味しかったのだが「次回はヒレ肉だ」と心に決めた。
シェフが会長を務める「長谷津と唐津をつなぐ会」ではアニメを愛する人たちに唐津を楽しんでもらえるようなイベントを企画し、シェフが先頭に立って広告塔としてSNSやメディアに露出している。タクシーで聖地をめぐる「聖地巡礼タクシー」もその一つだ。

帰りのお会計の際にもシェフが対応し最後まで手厚くもてなしている中、みんな一緒に記念撮影

唐津市では「ユーリ!!! on ICE」とコラボしたイベントがさまざま企画されている。
そんな企画の広告塔として、河上シェフが動き続ければ、唐津の“ユーリ熱”は当分冷めることはないだろう。

DATA
キャラバン ステーキ専門店
住所 佐賀県唐津市中町1845
電話 0955-74-2326(ご来店の際は要予約)
営業時間 11:30〜15:00、18:00〜22:00
定休日 火曜日

http://ca1979.com/

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