愛情とスパイスに溢れた“旅するカレー”

愛情とスパイスに溢れた“旅するカレー”

column 58

村岡 昌一

October 26, 2018

佐賀市中心部から国道263号を車で北に向かうと、30分ほどで山々に囲まれた三瀬村に入る。“みつせ高原”とも呼ばれるこのエリアは、観光牧場や観光りんご園、温泉に蕎麦、天然酵母のパン、手作りソーセージの店などがあり、多彩な魅力に溢れている。

三瀬村内のパン屋さんの隣で販売していた頃。(2016年7月撮影)

この三瀬村に会いたい人がいた。2015年から『旅するクーネル』の名前でスパイスカレーの移動販売をしている井上よしおさんだ。

笑顔が印象的な井上さん

かつて、福岡市で『食堂クーネル』を経営していた井上さんは、店を閉め、旅に出た。1年間で南米、欧州、アジアなど22ヶ国を訪ね、帰国後、縁あって三瀬村に移住する。

「北山湖辺りを歩くと、いろんな鳥の鳴き声が聞こえてくるんです。福岡市の中心部からわずか1時間のところにこんな場所があるって、すごいっすよ」と三瀬村の魅力を語り、「やっぱり山が好きっすね」と続けた。

井上さんのアルバム

井上さんを『食堂クーネル』の頃から知る客が、「すっごい山に登ってるんですよ」と教えてくれた。別室から持ってきてもらったアルバムには、エベレストのベースキャンプで撮った写真があった。

井上さんは、22ヶ国を旅し、インドやスリランカ、ネパールには元気な人が多いことに気づく。その源はスパイスではないかと考えた。さらにひとつの場所に縛られたくないという思いもあり、カレーの移動販売を始める。

「カレーを食べていただいて、お客さんが健康になれば、うれしい。どうせやるなら、いいことしたいっすね」。

『みつせCUBE』の様子(みつせCUBEのことは恵良さんの記事をご参照

訪れた日は、三瀬村のコミュニティスペース『みつせCUBE』を借りて営業をしていた。中に入った途端、スパイスの香りの先制パンチをガツンと食らう。南アジアの町にぐいっと引き込まれた。そんな感覚だ。

色鮮やかなスパイスカレー

銀色のお皿に乗った色鮮やかなカレーが運ばれると、一気に気持ちが昂ぶる。
4種類のカレーと三瀬村の無農薬野菜を使った副菜を混ぜながら、口に運ぶ。旨さに加え、辛さと甘さ、酸っぱさと苦さ。何種類ものスパイスの香り。複雑な組み合わせが生む美味しさは無限大だ。次第にじわじわと汗が流れ出す。

福岡と佐世保から来たお客さんたち。汗を拭きながら大満足だ

午前11時の開店から客足が絶えることはなく、用意したカレーは午後2時すぎには底をついた。

「お客さんにあいさつもできない忙しさは嫌っすよ」と井上さん。対話しながら、その人のために料理を作ることを大切にしたいのだ。『食堂クーネル』には、『お客さんと決めるチャーハン』というメニューがあったと聞いた。「料理はライブ」という井上さんの言葉は印象的だ。

スパイスセットは500円で販売している

カレーの移動販売、スパイスセットの販売だけでなく、他店のメニューづくりや料理教室などにも活動を拡げている。最近では小学生の前で話をする機会があったそうだ。知人から贈られた「頼まれごとは試されごと」という言葉を胸に、近県のイベント会場にも出店のため出かけていく。

ギターを抱え『食堂クーネル』の頃からのお客さんと談笑する井上さん。

井上さんは、近くまた旅に出るのだそうだ。「『どうやら楽に生きたいらしい』とでも書いてください」と井上さんは笑う。

どこか飄々とした風情を漂わせながら、井上さんは“今この時”に向き合い、情熱を注ぐ。「何があるかわかんないっすからね」という言葉が、その理由の一端をうかがわせた。

料理は、作る人の知識と経験の全てと思いを込めるもの。井上さんのスパイスカレーは、そんなことを強く感じさせる。

DATA
旅するクーネル
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