4人のボランティア、立ち上がる ~笹沢佐保記念館~

4人のボランティア、立ち上がる ~笹沢佐保記念館~

column 64

恵良 五月

February 06, 2019

作家、笹沢左保(ささざわ さほ)を知っていますか?

彼の代表作『木枯らし紋次郎』のタイトルを、聞いたことがある方も多いと思います。富士町古湯温泉のすぐ近くに、笹沢左保の記念館があります。白い壁に赤い屋根、風見鶏までついた素敵な建物は、笹沢左保が昭和63年から7年間暮らし、100冊もの作品を生み出した邸宅です。

「笹沢左保は、古湯映画祭にゲスト出演したとき、散策したり、人々と交流したりするうち、古湯に魅了されました。横浜生まれの彼は『田舎暮らしの経験のない私が空想していた故郷の風景がここにある』と言って、移住を決意したのです」。記念館館長の島ノ江修治さんが笹沢左保について、詳しく解説してくれました。

笹沢左保の愛した風景を背に、解説してくれた島ノ江さん。「当時、建物は1つもありませんでした」

ここで暮らした7年の間、原稿が仕上がると古湯の旅館にみんなを集めて酒盛りをしたり、結婚式に呼ばれれば出席したりと、笹沢左保は富士町の人たちにとても愛されていました。交流した地元の人たちにお話を伺うと、みんな申し合わせたように、笹沢佐保の振る舞うびっくりするような豪勢なお料理のこと、24時間でも飲み続ける豪快な飲み方のことを話されます。

現在、旧自宅の奥が記念館になっていて、出版された本や直筆原稿、執筆風景を写した写真などが展示されています。とにかく、その本の多さには圧倒されます。富士町で100冊執筆されたのも驚きですが、作家人生42年間で380冊も書かれたというのは驚異的です。

記念館

出版されたすべての本が所蔵してあります

直筆原稿

とてもきれいな記念館ですが、実はこれまであまり知られていませんでした。というのも、2017年3月までは、日曜日の公開に限られていたからです。それを、館長の島ノ江さんを含む4人のボランティアが「それではあまりにもったいない」と立ち上がり、休館日の火・水曜以外の朝10時から夕方5時まで、しっかりと開館してくれるようになりました。

立ち上がった4人のボランティア。左から諸岡敏さん、中牟田安彦さん、島ノ江修治さん、梅﨑勝さん

定期開館にあたり、ボランティア4人で協力して、書棚の本を並べ替えたり、資料を集めたり、劣化しかけていた直筆原稿を中性紙で作った箱に保管したりと、記念館をリニューアル。花壇・野菜畑のお世話や敷地内の草刈りなどの管理も徹底しています。
館長の島ノ江さんは、古湯に宿泊中たまたまこの記念館を訪れるまで、笹沢左保のことをあまり知らなかったといいます。それが、館長となった今では、秘書か友人かと思ってしまうほど、笹沢左保のことをよくご存知です。島ノ江さんがお話してくれる数々のエピソードに、ここを訪れる誰もが引き込まれてしまうに違いありません。

リニューアルオープン後2年目となる今年からは、さまざまなイベントも開催。佐賀新聞の記者を講師に迎えて新聞記事の書き方を学ぶ教室を開き、地元の小中学生を招待したり、笹沢左保の命日に合わせて10月14日~28日まで『紋次郎忌』としてイベントを行ったりと、地域貢献に努めています。
2018年12月1日には、地域の方々と協力して餅つき大会が行われました。

地元のお母さんたちがつきたてのお餅を丸めます

盛大なイベントではないし、大きな記念館ではありません。正直言って、私はこれまで笹沢左保の著作を読んだこともありませんでした。なのに、なぜ私はこの記念館にこんなにも心を惹かれるのでしょう。それは、ここに“温かさ”があるから。島ノ江さんたち4人のボランティアの熱意と記念館への愛情、そして地元へ貢献したいという強い想いがこの温かさを創り出しているのだと思います。
笹沢左保は古湯をとても愛していました。そして、島ノ江さんたちは、記念館があまり活用されていないのでは笹沢左保が残念に思っているはずだ、と感じてこの活動を始めました。笹沢左保も、天国からこの餅つき大会の様子を見て、きっと喜んでいることでしょうね。

笹沢さん、この様子、天国から見ていますか?

DATA
笹沢左保記念館
佐賀市富士町小副川2579
TEL:0952-23-7141(ミサワホーム佐賀内)
入場料:大人300円 団体(20名以上)200円
子ども(小学生以下)無料
開館時間:10時~17時
休館日:火曜、水曜

http://u0u0.net/Q54u

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