尾崎人形の今を支え、その先を創る ~城島正樹さん~

尾崎人形の今を支え、その先を創る ~城島正樹さん~

column 67

村岡 昌一

March 19, 2019

佐賀県に、元寇(げんこう)の際に伝わったとされる人形がある。尾崎人形は、700年以上も前から神埼市神埼町尾崎地区で作られている。

尾崎人形の中でも代表的な『鳩笛』

その唯一の製作者、尾崎人形保存会の髙栁政廣さんを支える人がいる。佐賀市唐人町にある『佐賀一品堂』の堂主・城島正樹さんだ。神埼市出身の城島さんは、すばらしい伝統工芸が、途絶えようとしている現状を何とかしたいと思い、2014年の春、伝統工芸品を展示・販売する『佐賀一品堂』を開いた。

尾崎人形は、髙栁さんが製作、そして城島さんが髙栁さんのサポートをしながら販売と販路拡大を担う二人三脚で、全国各地に届けられている。

『佐賀一品堂』を訪ねると、城島さんは軽やかにカウンターに出てきて、にこやかな笑顔で迎えてくれた。

2019年無印良品の『福缶』採用の『カチガラス』。お土産として『佐賀一品堂』でもよく売れている。

きっかけは、2013年の冬のことだった。その頃城島さんは、尾崎人形はもう製作されていないと思っていた。そんな中、ギャラリーで新作の尾崎人形を目にする。「まだ作っている!」という嬉しい驚きとともに、昔のある思いがよみがえり、髙栁さんの元を訪れた。「子どもの頃、尾崎人形の絵付け体験をしたことがありました。だけど、上手く描けなかったんです。その再挑戦をしたいという思いを持ちながら工房を訪ねました」。その際、髙栁さんから「店に人形を置いてみらんね」と話があり、二人の活動が始まった。

尾崎人形の今について話す城島さん。

「お客さんからは『ゆるくて、かわいい』とか『おもしろい』と評判です。置くだけで、空間が和みますし」。今では、展示会に出展したり、東京のセレクトショップからも注文が来るようになった。城島さんは大きな変化を感じているが、「ブームのようなところもあります。心意気だけでは難しいんです。販路の拡大と生産体制を整えることが必要です」と経営の安定を課題を挙げる。

佐賀市内の羊羹屋にあった尾崎人形『ようかん食い人形』

尾崎人形は、子どもの健康を願うお守りでもあったそうだ。土が持つ虫下しの効用を、子どもが笛を吹くことで取り込めるように土笛にしたという。「そういうことを知るだけでも、見方が変わってきます」と城島さん。

モノも情報も溢れている時代だ。価値やストーリーをしっかり伝えないと埋没してしまう。城島さんは、そんな危機感も持ちつつ挑戦を続けている。

聞いておきたいことがあった。尾崎人形の作り手についてだ。城島さんは、ひとつのアイデアとして答えてくれた。「自分が尾崎地区に住んで、作ることも考えています」。この愛らしく、歴史ある人形には、これからも道が続いていく。ほっとするような嬉しさを感じながら、改めて尾崎人形を見つめる。その向こうには城島さんの笑顔があった。

人形づくりをする髙栁さんと城島さんの写真。

DATA
佐賀一品堂
電話:070-5276-2797

髙栁政廣(尾崎人形保存会)
電話:0952-53-0091

http://sagaippindou.com/

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