尾崎人形と大学生 ~選んだ理由と贈られたもの~

尾崎人形と大学生 ~選んだ理由と贈られたもの~

column 68

村岡 昌一

May 08, 2019

「ここまで来られるとは思っていませんでした」
佐賀県神埼市神埼町尾崎地区で、700年以上の歴史とともに作られている尾崎人形(おさきにんぎょう)。
その絵付け体験イベントを終えて、主催した佐賀大学3年生(※2019年1月時点)の一人、小松摩瑠実さんは声をはずませた。

“白いキャンバス”状態の長太郎。

尾崎人形は、元寇(蒙古襲来)の際に捕虜となって尾崎地区にやってきた蒙古人が、故郷を思って作り始めたとされている。鳩笛や水鳥など、素朴で温かみのある民芸品として知られ、約40種類ほどの全てを尾崎人形保存会の髙栁政廣さんが手がけている。体験イベントのキャッチフレーズは「あなただけの長太郎をつくろう」。白いキャンバス状態の尾崎人形『長太郎』に、参加者が絵の具を使い自由に仕上げていく。

小松さんたち7名は、2018年10月から半年間の講義「地域創成学」で示された「地域と関わり新しい何かを作る」という課題に対し、尾崎人形をテーマに選んだ。工房見学などをしていく中で、製作者である髙栁さんや髙栁さんをサポートする城島正樹さんなどの支援を受けながら、イベントの日を迎えた。

紙芝居の似顔絵からも、髙栁さんの人柄が伝わってくる。

1月中旬のお昼過ぎ、佐賀市中心商店街の一角にある『わいわい!!コンテナ2』には、定員を超える17名が集まった。
まず、イベントを運営する4名の大学生が、紙芝居で尾崎人形の歴史などを紹介した。その後参加者は、絵筆と長太郎を手にして絵付けに没頭する。1時間ほどの静かな時間が流れた後、オリジナルの長太郎が出来上がり始め、コンテナの中は次第に賑やかになっていった。

絵付けが始まると、コンテナの中は急に静かになった。

絵筆を使いながら、細かに描いていく。

小松さんなど若い人達にとって、尾崎人形はどんな存在なのだろう。

「フォルムがかわいいんです」と古賀華恋さん。あまりに好きなので、自ら粘土を使って「オリジナルの尾崎人形」を作っていた。

荒武明日香さんは「絵付けで自分だけの尾崎人形を作られる、自由で懐の深いところも魅力」と言い、「人とのつながりを作ってくれた大切な存在です」と続けた。

出来上がったオリジナルの長太郎を手に、みんな嬉しそうだ。

「尾崎人形が広く知られていないのはもったいない」と玉江紗央理さん。大学1年生の時から、尾崎人形をもっとメジャーな存在にできないかと思っていた。

小松さんは「完成品を手にするのも、絵付けでオリジナルの人形を作るのも楽しい。尾崎人形は髙栁さんの人柄のように温かいんです」と言い、「尾崎人形の魅力を広く伝えることで、お世話になった髙栁さん、城島さんに恩返ししたい。できれば、後輩にも引き続き魅力を広める活動をしてもらえれば」と結んだ。

絵付け体験イベントを終えて、晴れやかな表情の荒武さん、古賀さん、小松さん、玉江さんの4名。楽しくて素敵なイベントだった。

彼女たちが言うように、尾崎人形は多彩な魅力に溢れている。かわいらしい外観に留まらず、心や空気を柔らかにし、遠い記憶の中にある陽だまりのような、懐かしい温もりを感じることもある。

そんな尾崎人形と深く関わった半年間。尾崎人形がつないでくれた縁や自分自身の成長など、彼女たちが手にしたものは、きっと想像以上だ。

DATA
髙栁政廣(尾崎人形保存会)
電話:0952-53-0091

佐賀一品堂
電話:070-5276-2797

http://sagaippindou.com/

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